シロ王子クロ王子
[黒の色](1/18)

「のの、それ取ってー」

「自分で取ってよ!」


 家に帰ったら珍しくお兄ちゃんが既にソファで寛いでいた。


 本棚にある本を取ってとあたしに要求するお兄ちゃんをギロッと睨む。


「何怒ってんだよ」

「別に」

「学校で何かあったのか?」

「お兄ちゃんには関係ない」

「お前、人が心配してやってんのに」

「頼んでないっつーの」


 あーもう完璧に八つ当たりだ。

 はぁ・・・。


「部屋に行ってるから」


 自分の部屋に入って、あたしには大き過ぎるベッドに横になる。


 イライラ。


 苛々が治まらない。
 あの変態王子、二度と見たくない。


――・・・


 いつの間にか意識が遠退いてきて、あたしは眠りについていた。


 夢の中で誰かに頭を撫でられている。


 ふわふわする。
 凄く優しい手・・・。


 目を開けると、目の前には二度と見たくなかったあの顔。


 見下したような千広君の視線が突き刺さる。


「ち、千広君・・・!?」


 ガバッと起き上がり、何度も瞬きを繰り返すと、あたしの頭を撫でていたのは、千広君じゃなかった。


 あれ・・・?


「あ、ごめん。起こしちゃった?」


 どうやら千広君が居たのも夢だったようで、夢の中にまで現れた千広君にさっきよりも苛々が募った。


「魘〈うな〉されてたよ。嫌な夢でも見た?」

「アキちゃん・・・?」


 ベッドに腰を掛けて、あたしの前髪をゆっくりと横に流しているアキちゃん。


 え、アキちゃん?


「アキちゃん!?」

「おはよう。と言ってもまだ夜の10時前だけどね」

「何でここにアキちゃんが?」

「遊びに来たんだ。絢斗がののちゃんは部屋に居るって教えてくれたから。勝手に入っちゃってごめんね」


 ああ、和む。
 さっきの苛々が消えていく。



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