[白の色](1/28) あたしの通う色鴇〈しきとき〉学院高等部には、2人の王子がいる。 “白王子”と“黒王子”。 色鴇なんていう学校名に肖〈あやか〉って付いた名称らしい。 勿論、“王子”と呼ばれているだけあって、2人共芸能人並みに整った容姿を持っている。 ――と、噂で聞いた。 色鴇学院に入学してから2年目の秋を迎えたというのに、その2人の王子とやらをお目にかかったことがない。 「のの、遅い」 「絢斗お兄ちゃん」 「今日は親父のところに行く日だろ」 七緒絢斗〈ななおあやと〉。2つ上のあたしのお兄ちゃん。 お兄ちゃんも色鴇の卒業生で、今はパパの母校でもある皇凰〈こうおう〉大学に通っている。 わけあって、精神科医のパパが勤めている病院に月に1回通院していて、病院に行く日はいつもお兄ちゃんが学校まで迎えに来てくれている。 というか、パパの命令でお兄ちゃんが使われている。 「早く行かないと俺が親父に怒られる」 「パパってお兄ちゃんには厳しいよね」 「それは息子と娘の違いだろ。やっぱり父親にとっては娘の方が可愛いんだよ」 「ええ、そうかなぁ」 完全にパパの容姿を受け継いだお兄ちゃんは、色鴇に通っていた頃もそれはそれは有り得ない程にモテモテだった。 おまけに頭脳明晰ときた。 対してあたしは、容姿も頭脳も運動も全て平均。 ホント恨めしい。 ⇒作品?レビュー ⇒モバスペ?Book? [編集] *戻る* |