浅葱色を求めて…
女中 ( 1 /28)



文久三年七月



島原への潜入は少なくなっていた
週に三、四回は行っているが
ほとんどが芹沢を止めるためで
芸妓としての稽古は休む事はないが
座敷に上がる回数は減っていた


朝稽古も終わり、井戸に向かおうとしていた千夜。

「芹沢さん!今いいですか?」

最近何かと声をかけてくる平隊士
佐々木愛次郎の姿…

「あぁ、愛次郎か…
どうした?」

腕をとられ、ズルズル…

そんな急ぎの用事?

人があまりこない裏庭…

「助けてください。」

「お前、
私を見てはいつもそう言うな…」

そう佐々木愛次郎は、
何かと私に助けを求める事が多い

恋仲の事だったり
平隊士の事だったり
内容は助けてくださいと
言う内容では無い…

私を頼る理由がわからないが…

「別れたんです。」

「は?」

「だから、あぐりと別れたんです。」

何故?
こいつとあぐりは…
八月に……心中……

いや、あぐりは舌を噛み切って
そこまでして、愛次郎を…

愛してた…のに?

愛が、わからない千夜には
仲間が居なくなる感情と同じと結論付ける事しかできなかったが…

でも別れたって……なんで?

「芹沢さん?聞いてます?」

「あぁ、悪い。
で?助けて欲しいって?」

ここで別れた原因を追求してもしょうがない…

「付き合ってください。」

「は?何に?」

「だから、
俺と恋仲になってください。」

は?
何で私なのか?

確かに相談はのったりしてはいたが…

ニコニコして言う愛次郎は
イケメンに分類されるであろう
美男子…

こいつは長州の人間…の筈……

どうする?

って、ちょっと待て……
こいつ私が女って知ってるのか?

「愛次郎?お前……ん…」

聞こうとしたら、

唇を押し当てられた…
私はまだ答えていないのに…

そっと離れた唇……

「どっちでもいいよ
芹沢さんが男でも……女でも。」

そう耳元で囁かれた……

どういう意味ですか?









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