浅葱色を求めて…
幕末…… ( 1 /20)




「月が、綺麗な夜ですねぇ。

土方さん?」


「……」


「 はぁ。土方さん?聞いてます?」

「……あぁ。聞いてる。」


文机に向かったままの土方を見て

絶対聞いてないと思う沖田。


「そんなに、楽しいですか?

ーーソレ。

京に来てから、

書物を読んだり書いたり…

ちょっとは、
京の風情も味わったら如何です?」


ほら、お茶も用意しましたし。

と、縁側に来いと
遠回しに誘い続ける沖田に


土方は、

とうとう、折れて筆を置いた。


「……ったく、
素直に、一緒に茶をしようって、
言えばいいだろうが。」


「はい。いいですよ。」


ニッコリ笑って言った沖田に

やられた…

と、息を吐き出した。

これじゃあ、
土方が茶を誘ったみたいだ。


「なんで、そんなにご機嫌なんだ?」


「……そう見えます?」


「見えるから言ったんだろうが…」


「だって、珍しく静かな夜で

月はいつもより大きくて

いい事がありそうな気がしません?」


そう言われ、
月を見上げた土方


確かに、いつもより大きな月


「どっちかっていうと、
面倒事が増えそうな気がするがな…」


と、沖田の用意してくれた
茶に口をつけた。


「土方さんに
わかってもらおうとした

僕が、馬鹿でした。」

口を尖らせて言った沖田を見て

土方は鼻で笑った。


「土方さん。」

そんな2人の前に現れた
黒装束の男


「山崎か、どうした?」


「屯所の前に怪しい奴がおったらしい。

どないします?」


「怪しい奴?」


「俺も聞いただけやけど、
もしかしたら

長州と関係あるかもしれやん。」


んーっと土方は考え


「捕縛しろ。
総司、お前も呑気に茶啜ってねぇで、

行くぞ。」


「あーあ。折角のお茶が…」

ジト目で土方を見つめる沖田


「………。


仕事してくれ…」


切実な、お願いが聞こえてきた。


「じゃ、今度
団子奢って下さいねー。」


そう言い残し
沖田は、その場からいなくなった。


「……また、騙された…」


「……。」

意外に可哀想な人やな…


と山崎は、思ったのだった。




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