姫ってずるい。
* 姫と騎士<ナイト>(1/1)








姫ってずるい。

憎めない程に優しく。
憎めない程に美しく。
憎めない程に誠実で。
憎めない程に賢明で。


最早違う世界に住むかの様な、
そんな錯覚を覚えさせる程の、
妖艶で、儚い、愛しい姫。




でもね、姫。

姫はもう騎士に護られる
時代じゃないんだよ。

配管工のヒゲオヤジにも
護られる時代じゃないんだよ。


なのに、時の流れに逆らって
姫はいつの時代も護られるんだ。


姫ってずるい。


高い棟の最上階の窓から
目敏く下界を見下ろす
だけじゃダメなんだ。

待ってるだけじゃダメなんだ。


騎士の背中で敵を睨んで
たまに騎士の顔を心配そうに
覗き込むばかりじゃダメなんだ。

騎士の一挙手一投足に
赤面してるだけじゃダメなんだ。


姫ってずるい。


騎士の背中の死角から
敵に攻撃しないと。

騎士に護られる前に
自分で逃げないと。

騎士が来る前に敵に
反撃しとかないと。

そうしないと、ダメなんだ。

しのごの言ってる
場合じゃないんだ。

護身用にさ、
サバイバルナイフの
1本でも持っとかないと。

敵に軽く一刀くらい
入れてやらないと。


強くならないと。


いつまでも騎士は
護ってくれないよ?

騎士だって騎士の
仕事があるんだもん。


騎士はね、姫。

君を、護る為だけに
生きてる訳じゃないんだよ。

確かに君を護り、君は護られ。
それで均衡を保つ事だってある。


でもそれは当たり前じゃなくて。
それに気付くべきだよ。


姫ってずるい。


常に笑顔で在る事は、
確かに姫じゃなきゃ
出来ない事かも知れない。

でも、それが義務に
なってはいけない。

そんな笑顔、そんな姫を、
僕等は望んでない。


僕等が望む姫は。

騎士の望む姫とは違うけど。


僕等は姫に、
強くなってもらいたい。

只、それだけ。


僕等がいなくなった時。

そんな時にも、姫には笑顔で。
強く生きていて欲しいから。



姫って、ずるい。


僕等の願いは、
きっと届かないよね。


姫は、遠い、遠い存在。
君は僕等の太陽なんだ。

僕等が消えたって、
姫が哀しむ事は
ないかも知れない。


でも。

少しでも、困るなら。

僕等はいつまでも。
君の傍にいるよ。


僕等は姫に、小さな
変化も与えないけど。

僕等は確かにここに在る。


いつか、気付いてくれるかな?



ね。

愛しい、姫―――……。






―了―







- 1 -

[*]BACK|NEXT[#]
/2 PAGE
:: SHエロRエ


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

BACK