秘密実験
×[エピローグ](1/1)




八月三日──。


閉園時間が迫る夕暮れ、二人は遊園地の花形である観覧車に乗っていた。



「杏……好きだよ」


「……うん。私も」


互いに見つめ合い、どちらからともなく静かに唇を重ねた。


もう半年も付き合っているのに、数えるほどしかキスをしていない。


それもこれも、悠介が奥手すぎるのよ!


まあ、そんなところも好きなんだけどね──と、杏奈は心の中でつけ加えた。



「ねぇ、杏。俺さぁ、何か怖い……」


悠介が神妙な面持ちで呟く。



「怖い……?」


「うん。幸せすぎて怖い!」


そう言って、悪戯っぽく笑う。


思わず杏奈も吹き出し、彼の頭を叩く真似をした。



「もう、何言ってんの〜」


「あははっ。でもさ、俺は本当に幸せ者だと思う。こんなに可愛い彼女がいて……さ」


鼻の頭を掻きながら照れ笑いをする悠介を見て、杏奈は何も言えなくなった。



悠介……。


口には出さないけど、私も幸せだよ?


何があっても、私たちは大丈夫。



固い絆で結ばれてるから。




「悠介、こっち向いて?」


「え?……あっ!」


不意打ちで悠介にキスをした。


案の定、彼は顔を赤らめながら慌てている。


笑いの絶えない一日だった。



「あ、そうだ。来週は海だからな?」


「分かってるってば!」


悠介はどうしても海に行きたいらしい。


そんなに急がなくても、私たちにはまだまだ沢山の時間があるのに。



……そうだよね、悠介?




輝かしい未来に暗雲が立ち込め始めていることも知らず、若い二人は別れを惜しむかのようにいつまでも手を繋いでいた。






【秘密実験・完】





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