SUMMER MEMORY

Scene　Ex．[プロローグ](1/1)

　少年は車の助手席で揺られながら、窓の外を眺めていた。

　着ているのは、真新しい制服。

　手に持っているのは、真新しいケータイ。

　高校進学を機に、ようやく買ってもらえたものだ。

　二つ折りになっているケータイをたまに開いてはまた閉じる。

　そんなことを繰り返す。

　しばらく繰り返しているうちに、窓越しに海が見えてきた。

　最後に二人で歩いた海だ。

　彼は視線をケータイの待ち受けに移した。

　そこに写し出されているのは、あの海で撮った写真。

　屈託のない笑顔を見せる自分と、女の子。

　自分のせいで失ったしまったものの大きさを、いやでも思い知らされる。

　そして思い出していた。
　
　
　たった半年前の……夏のことを。

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