引きこもり山下くんを引きずり出す方法。
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「ことちゃん、ケーキ食べない?」
そう言って母が急にご馳走を差し出した。
箱の中を覗くと、そこには私の大好物であるメロンショートケーキが入っている。
期間限定で大人気のそれは中々手に入らない代物だ。
この間なんて販売開始10分で売り切れたらしい。
レア度☆5と言っても過言ではない。
そんなケーキが何故ここにあるのか。
−−−− 怪しい、怪しすぎる。何かあるなこれは。
私は母をみた。
いつものようにニコニコと笑顔を浮かべ、
「さぁ、どうぞ。」と言わんばかりにメロンショートを見せつけてくる。
ふわふわホイップの上に飾られた、丸い小さなメロンの果肉たちが
キラキラと己を主張して光り輝いている。
−−−− ゴクリッ
前傾姿勢を保ちながら涎を垂らしそうだ。
私は思った。
・・・これは何があっても食うしかない!と。
「いただきます。」
もはや裏があっても構わない。
後の地獄より今の幸福を大事にするわ。
ショートケーキをそっと取り出し、お皿にのせる。
ケーキの周りを囲む透明のそれを外して、さぁ準備は万端!!
根こそぎえぐるようにフォークを突き刺し食べた。
−−−− パクッ
「ことちゃん。お願いがあるの。」
「・・・・・・」
・・・待ってくださいお母さん。
話切り出すの早すぎじゃないですか?
せめて、せめて美味しいぐらい言わせて・・・!
1口食べただけで速攻地獄チラつかせるのやめて!
なんとも言えない悲しい顔を晒していたら、
母は、
「食べたもんね?言うこと聞いてくれるよね?」
と笑顔で脅した。
・・・・・・嫌な予感がものすごくする。
きっとメロンショートケーキじゃ割に合わないお願いだろう。
だが仕方ない。
地獄でもいいと手を出したのは私自身だ。
だから抵抗などしない。
大人しく頷きながらメロンの果肉を口に含んだ。
とても甘美な香りが鼻をぬける。
−−−− あぁ、おいしい。
幸せそうにケーキを頬張る娘を優しい目で見つめながら、
母は話を切り出したのだった。
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