ヒカリとキオク [きおくのありか](1/27)


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「ずいぶん遅かったんだな」

部屋で着替えをすましたところで、リュウがまたベランダから訪ねてきた。

「うん、ちょっとね」


心配をかけたくなくて、病院にいっていたことは黙っておくことにする。

すると、リュウはなにやら不機嫌そうな顔で黙り込んだ。
定位置なのか、椅子の背もたれを跨ぐような格好で座ったまま。

椅子を占領されているので、私はしかたなくベッドに座る。

リュウは不機嫌そうな表情でじっと床を睨みつけているだけで。

しばらく沈黙が流れる。


なにか話があったから来たんじゃないかと思うのに。

なんでなにも言わないんだろう?

放課後からなぜか不機嫌そうだし。


「あのね・・・リュウに教えてもらいたいことがあるんだけど」

いいかげん、沈黙にも耐えられなくなって口を開く。

なにより、本当に訊きたいことがあったから。

「今までの学校での私って、どんなだったのかな?」

今日一日で嫌というほど味わった、ヒカリさまと呼ばれる扱い。

あんな状況で、ヒカリはどうすごしていたんだろう。

親に聞いても知るはずないし、学校でそんなことを聞けるような親しい間柄の子が居るとは思えない。

こんなことを訊けるのはリュウだけなのだ。

リュウもそれはわかったんだろう、不機嫌そうな顔が一転して少し迷ったような様子になる。

「あ〜、なんていうか・・・学校でのヒカリは・・・盛大に猫かぶってたな」



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