源氏物語
[明石](1/17)





それから数ヶ月後。


激しい嵐が須磨を襲っていた。


「惟光〜…」


「なんですか」


俺はまたかと思いながら柱にすがり付く若君に近寄る。


若君は半泣きになりながら俺を見た。


「俺はもうだめや…ここで死んでまうんや…」


「何言うとるんですか。これっぽっちの嵐じゃ、死ぬわけないでしょ」


俺は呆れながらもそう諭す。


ここ数日、激しい雨と風が続いていた。


俺たち従者はせっせと走り回り、家が吹き飛ばないようにしたりしている。


しかし若君はこういう嵐が苦手なのか柱にすがり付いて震えているのだった。


それでも男か!と喝を入れてやりたいほどの腑抜けさである。


「だって…雷はゴロゴロやし、昨日なんかすぐそこまで波がざっばあー来よったやんか…絶対に俺を迎えに来たんや…」


「あほらし。はい、さっさと移動しますよ。ここじゃ危険ですので台所の方へ行ってください」


「嫌や…一歩動いたらここに雷が落ちる…」


がたがたと震える若君。


ほんま意気地無しやなあ。





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