源氏物語
[花散里](2/13)





「須磨とか明石の辺に決まっとるやろ」


なんでまた須磨とか明石?


俺は歩きながら首を捻る。


須磨や明石ってなんかあったっけ?


「いやーやっぱ涼しいとこ行きたいし。海で遊ぶでー!楽しみやなあ」


そこかいっ!


思わず何もない所でつまずいてしまう。


「若君…遊ぶってなんですか!ご自分の立場、わかっとられるんですか!?」


「ええやん。どうせならぱーっと楽しくやりまひょ」


「旅行やないんですよ、旅行じゃ。あくまで謹慎なんですからね」


「分かっとるわい。せやけど、土地的にも京から程よく離れた場所にあるし、東国とかに行くよりええやろ」


「まあ確かに…」


なんだかうまく言いくるめられた気がする…


「な?俺は海に入れるし、右大臣の方は俺を追い出せるし、一石二鳥やん。はい決まりー。質問、進言、反論、すべて受け付けませーん」


若君はきっぱりと言い切ると、また「暑いー」とうだうだし始めた。


なんとかならんのかね、この方は…


俺はふう、とため息をついた。





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