源氏物語
[賢木](35/35)
「謹慎…するわ。紫には明日話す。紫ならきっと分かってくれるはずや」
若君の力強い声に俺は大きく頷いた。
大丈夫。
この方は強い。
自分の失敗を引きずっていない。
次に、前に、進もうとしている。
若君も大人になったんや。
そう感じることができて、俺は嬉しい。
もう単なる顔だけの人間やない。
内面も光る君になってきたんや。
大丈夫。
この方なら付いていける。
不安がないわけやないけど、若君にならどこだって付いていく。
「…今日はもう遅い。明日から今までお世話になった人たちに挨拶とかしに行かなあかんし、身の周りのこととかも整理せなあかん。忙しゅうなるから、お前もはよ寝ろ」
若君は小さく笑ってそう言った。
俺は「はい」と頷くと、若君の部屋から退出したのであった。
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