源氏物語
[賢木](1/35)
──次の年の冬。
毎度、俺たち三人は雑舎に集まって秘密の会合を開いていた。
「…さすがの若君も今回は傷心やぞ」
「そうは言ってもなあ…俺たちにはなーんも、本当になーんもできねえよ。いっそのこと俺が女になって若君を慰めようか?」
「良清の女装なんて、猪に十二単着せたようなもんだろうが」
「あっ言ったな、孝道!いいか、この間は池に投げ飛ばされたけど、今度は俺が投げ飛ばしてやるからな」
「やってみろよ。できるもんならな。まっ、今度は池じゃなくて海に沈めてやるけど」
「お前らうっさいねん。良清!」
「あい」
「一年も前のことを持ち出してがーがー喚くな。お前はそれでも男か。孝道の代わりに俺がお前を猪に食わすで」
「すんません…」
「それから孝道」
「へい」
「お前に海までこいつを投げ飛ばす力なんあるんかいな。あ?ないやろ。あるわけないやろ。こっから海までどんだけある思うてんねん。せいぜい宇治川で我慢しときっちゅうの」
「了解です…」
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