源氏物語
[葵](1/68)





…それから一年が経った。


この一年は大したこともなく、平々凡々、過ぎていった。


あくまで俺の場合は、の話やけど。


「うううー…昔に戻りたい」


不満げな顔をする若君。


若君は二十二。


もう立派な大人である。


なのに…


「ぐうたらぐうたらせんと、参内しますよ」


「嫌や。父上もおらん、藤壺もおらん。何が楽しゅうてあんな場所に行かなあかんねん」


…若君…


俺は小さく息をつく。


そうなのだ。


平々凡々な毎日を過ごしているのは俺たち従者だけなもんなのである。




…この一年で世の中はすっかり変わってしまった。


まず、若君のお父上である桐壺帝がご譲位なさり、新しい帝には弘徽殿の女御…今は大后なんやけど、まあそいつが生んだ子、朱雀帝がお立ちになられた。


朱雀帝は、若君の兄宮にあたる。


んで、弘徽殿の大后の後ろには右大臣がバックに付いとるから、だんだん流れが左大臣から右大臣へと変わってきた。


せやけど、まだ桐壺帝が院になられて朱雀帝を見張っとるから、そこまで大きなことにはなっていない。





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