源氏物語
[紅葉賀](27/27)
あらゆる女を知り尽くした若君も、少納言の剣幕に「はい…」と素直に頷く他なかった。
「ほら、光さまもああ言ってくださったんですから。姫さまはお部屋に戻りましょう」
「えー」
「えーじゃありません。もう日も暮れてしまったし、姫さまはお休みになる時間ですよ」
問答無用に紫はんの手を引いていく少納言。
どうやらさすがの紫はんも少納言にだけは頭が上がらないらしく、頬を膨らませるだけで何も言わずに少納言に付いていく。
「惟光さん、また明日ねー」
紫はんは頬を膨らませながらも振り返ってそう言うと、あっさり自分の部屋へと戻っていった。
その場に取り残された俺、若君、右近の三人は、しばらくぽかんと口を開けてしまう。
「…この邸に少納言を連れてきて良かったな」
不意にぽそりと呟く若君。
俺と右近は大きく頷いたのであった。
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