源氏物語
[紅葉賀](2/27)





なんでこないに忙しいねんっ!と叫びたくなるほど忙しいのである。


「あっ若君」


俺はふと、あることを思い出して若君の所までまた走って戻った。


「なんや」


「明日は試楽があるんとちゃいましたか」


「そうやけど?」


「そうやけどって…ほんま舞の練習せんでええんですか?藤壺さまも来るんでしょう」


「………」


俺がそう言った瞬間、梅干しを丸呑みしたような顔になる若君。


…なんや?


「若君?」


「…うっさいなーお前は…黙ってさっさと働けや、蟻のように!!ちまちまちまちま働くんがお前の仕事やろが。無駄口叩かんと、さっさと行きい。せやないと給料減らすで!」


それは嫌やっ!


俺はぎょっとして、とりあえずその場から離れた。


雑用をこなしながら俺は考える。


さっきの若君、なんやおかしかったよなあ…


口が悪いのはいつものことやけど…


何かが引っ掛かる。


「まっええか」


俺は、若君の様子のことなんぞすぐに忘れて、再び働き蟻にと戻った。





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