源氏物語
[末摘花](2/35)
「で、どんな身分の方です」
「宮家の人間や。せやけど、両親共に亡くなられて、それからずっと一人で寂しいお暮らしなんやと。琴が上手いらしいで」
若君は「いや、実に趣深い!」と喜んでいる。
楽しそうでええなあ。
こっちは頭が痛いっちゅうに。
若君の女性関係で、どれだけ悩まされてきたことか。
いろんな女からの恨みつらみの文、恋文、相手の恋人からの苦情の文等々。
そんなものが毎日毎日届くのだ。
当の本人は
「そんなもんぽいっと燃やしてまえ、ぽいっと」
なんて気楽だが、こちらとしてはそうはいかない。
代筆で文を出したり、謝りの文を出したり…
毎日毎日そうやって若君の尻拭いをしている。
若君は良く言えば人気者、悪く言えば女たらし。
いや、悪く言わなくても女たらしや。
「まっそういうわけで、今度その女んとこに行ってくるわな。もちろんついてくるやろ?」
「ちょっと待ってくださいよ。展開早やないですか?」
俺がそう言うと、若君は豪快に笑った。
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