源氏物語
[若紫](25/25)





「…本気で言っとんのか!?」


若君は眉間に皺を寄せてそう質問する。


いやいや本気とかゆう問題ちゃうし…


「お兄ちゃんの方がこんなおっさんよりいろんなことしてあげられるよ?」


……若君が言うとどうしてもエロにしか聞こえないのは俺だけやろか?


「ふーんだ。惟光さんの方がかっこいいし、優しいし、あたしのタイプなのっ」


「やっ…やめえ…若君が…」


俺はそう言った紫の君の口を慌てて塞ぐ。


もちろん、手遅れだったけど。


若君は、がっくりと項垂れていた。


「なんでや…平安一の美男子と言われる俺がなんでこないな男に…ひょっとこみたいな顔した男に負けなあかんねん…」


誰がひょっとこや、まったく。


自分で自分を誉めるのもええ加減にせえや、ほんま。


俺が呆れてため息をつくと、紫の君がずばっと言った。


「ナルシスト」


「うっ…」


若君は今の一言で深い傷を負ったのか、涙目になっていた。


なんか若君が可哀想になってくるわ。


まっ、慰めようとは思わへんけど。


…俺は思わずくしゅんとくしゃみをした。





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