源氏物語
[夕顔](2/29)





……て、こらあ!


お袋を見舞った後に女の話題をするとはどういうこっちゃねんっ。


「………」


「なあなあ惟光」


「………」


「こっれっみっつー」


「………」


「惟光さまああ!」


「知りまへん」


若君のあまりのうるささに俺はふんっとそっぽを向いた。


「そう言わずにー」


「知りまへんったら知りまへん」


「調べてみようよー」


「大体、この間の空蝉さまはどうなったんですか」


俺がそう言うと、若君はしょんぼりとうつむいた。


「…どうせ思い続けても実らぬ恋なんや。俺が思い続けることで向こうに迷惑がかかるんなら、俺は身を引く」


「若君…」


そこまで空蝉はんのことを……


「それに失恋の痛手を直すのは新しい恋やろ」


「うー……分かりました調べときます」


「ほんま!?」


若君は目を輝かせた。


あーもう、俺ってどうしてこう甘ちゃんなんやろ。


若君は若君で鼻歌歌っとるし。


と、そこに。





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