源氏物語
[帚木](2/13)




「そんな無理することあらへんと思いますが」


「せやけど悔しいやん。頭中将に負けてられへん」


ごうごうと闘志を剥き出す若君。


はあ……


そんなにプレイボーイになりたいんかいな。


俺は軽くため息をついた。


「そないなこと言うてる暇あるんなら葵の上さまに会いに行ってもらいましょか」


「え」


若君はぎくっと目元を引きつらせた。


「何ですか、女の人と遊びたいんやったら北の方と遊べばええやないですか」


北の方というのは正妻のことである。


「嫌や。葵の上は無理。だめだめだめ」


「だめやありまへん。左大臣家ですよ。妻なのに扱いがぞんざいや、なんて思われたら下手すると官位剥奪なんてことになりかねまへん」


「そうは言うても……惟光は葵の上と会ったことあらへんから」


「会ったことなくても噂には聞いとります。えらいべっぴんさんやないらしいですか」


「確かに美人…やけど性格がなあ…つんつんしとって触れると血が出そうやねん。ツンデレやったら可愛いんやけどツンツンやぞ。こっちの身がもたんねんて」


うーっと頭を抱える若君。


ほんま報われない方ですわ。





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