hat trick

○[温もりをくれるのは](1/11)







その日、久し振りに休みがかぶって、前日の仕事終わりからリカが泊まりにきた。

『ミナ、携帯鳴ってたよ?』
シャワーからあがったら、リカは早速ビールを開けてた。

『あ、うそ?てか先に飲んでるし!』リカの頭を小突いて、私も缶を手に取る。

一口飲んで画面見てーー
ーーうそ…
『あ、でもワンコールで切れたから間違いかも?』

不在着信 ユキ 1件

『ーーユキだ。』

『ユキって、Jekyll and Hydeの?』

『そう。』

『かけてみなよ。』

間違い電話なのかな。

とりあえず、発信ボタンを押す。

〜♪
二回コールが鳴って、
「もしもし、ミナ?」って。

『ユキ。電話した?』
「したした。今、誰といる?」
なんだか、ひそひそ声のユキ。

『友達だけど?』
答えたら、ユキが笑う声がした。

「ワンコールでごめんね〜、彼氏といたらシカトするだろうし、いないならかけ直してくれるかなって思って。」

さすが、遊び人。

そういう知恵いっぱい持ってんだろうな。

『大丈夫。』
「ならよかった。今何してんの?」
『家でーー飲んでる。』
「ならさならさ、店おいでよ。うちで飲んでよ。奢るよ。ケイが近所の店に呼ばれちゃってさ、今一人なの。」
ーーケイ、いないんだ。

『でもうちら、お風呂入ったからスッピンだよ。てかもう飲んじゃったし。』

「気にしない、気にしない!タクシーだすよ?」

どうしよっかな。

リカを見たら、『行こう行こう。』って顔してる。

タダ酒が飲めるなら、どこまででも行くよ。って。

『分かった。なら今から出るよ。』

ケイがいないのは、残念なような、ほっとしたような。





『お邪魔しま〜す!』

勢いよくドアを開けるリカ。

「お、来た。」

店内にはユキ。

本当にケイいないんだーー

『久し振り!』

「久し振り。リカも。」

そか、この二人、一度会ってるんだ。

『雨降るとやっぱお客さん少ない?』
「ん〜、月に2、3回こういう日があるよ。うちは比較的客入ってるほうではあるんだけどね。」

前来た時は多かったけどな。
まぁ、うちの店もそうだけど。

天気や給料日の関係でやたら少なかったりすることがある。




飲み始めて一時間くらい。

「そんでさ、そのお客さんがウケるんだよ。《俺の髪、なんかついてます?》って。」

『まぢで!?超うけんだけど!』

ユキってさすがだな。って思う。

仕事のせいか、遊び人だからか。
話が上手い。

場を盛り上げるのが。

それにしてもーー
酔えない。

二人はいい感じにアルコールがまわってきたのか、上機嫌だけど、私だけ酔えてない。

タバコ吸おうーー

ポケットを漁って、そういえば家に置いてきたことに気付いた。

『私、タバコ買ってくる。』

コートを羽織って店を出たら、アルコールで火照った身体に寒さが染みた。

小走りで向かいのビルのコンビニに行って、レジに並んでたら、
「ーーミナ?」
って。

『ケイ…』

何でここにいんの。
別のお店に行ったんじゃなかったの?

『ユキがね、暇だからって呼んでくれーーって、ちょっと!』

ケイは私が手にしてたガムを奪って、

「7番と、65番。」

自分と私のタバコの番号を店員さんに伝えてる。

『ーーありがとう』
「ん。」

二人で並んで、店の外に出る。

『ユキが、ケイはいないって言ってたのに。』
「ちょっと、呼ばれてた。」
『そっか。』

ビルに着くと、ケイは立ち止まった。

ーー行かないの?



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