長谷くんは真顔で愛を語る。


振り回され過ぎ。(1/9)


***





「…で、色々話し込んで、解決したーって思ってたら、つ、付き合って、って言われた」




こういうことを人に言ってしまうのはどうなのか、と数日悩んだ挙句、
結局一人で抱え切れず、先日起きた出来事を千鶴に聞いてもらう始末。




「ほーん」




けれど、千鶴のリアクションはそれはそれはうっすいもので。




「な、何そのリアクション。いつもの はぁ?は???」



「いやだってそうなるだろうなーとは思ってたし。まぁ予想より早かったね。焦れたな長谷くん」



「え?え?」



「凛子のこと好きなんじゃないの、って言ったじゃん」



「そうだけど…信じらんない。そのあとも結局いつも通り買い物行ってご飯食べてDVD見て寝たんだよ?普段通り過ぎない?」



「気遣ってんでしょ」



「本気なのかどうかもわかんないし、こっちからは聞けないし…」






あの後。




気にしないで、と言った長谷くんは
なんら変わりなく。



あの日以降も毎日家に来るし、ビールも飲むし
泊まりだってする。



正直、戸惑いが止まらない。





「本気かどうか、ねぇ。」




小さく呟く千鶴。




「そんなの、凛子が一番良くわかってんじゃないの?」




見透かすような言葉。




そうなんだ。




あれは、きっと冗談なんかじゃない。
長谷くんはあんな冗談、言わない。




それがわかってしまうから、尚更どうしたらいいのかわからない。




「…気にしないで、って言ってたよ」




「そんなんうそうそ!気にして欲しいから言ったに決まってんじゃん!」




豪快に笑う千鶴。




「…ちょっと。なんか楽しんでない?」



「バレた?」



「もーーこっちは真剣に悩んでんのに…」



「はっは!いいじゃん悩め悩め!あんなイケメンに告られて悩むなんて贅沢一生出来んぞ!」





そんなことを言いながら、千鶴はどこか嬉しそう。




「今日、オタクサークルの飲み会でしょ?」



「そうだよ」



「さて、次はどんなアクション起こしてくるかな〜」




千鶴のうきうきが、声で伝わってくる。
すんごいニヤニヤしてるし。




「なんもないよ」



「なんかあったら真っ先に報告してよね!」




ぽん、と肩を叩かれる。



なんもないなんもない。



…と、思う。








- 62 -
back next

bookmark

/332 n


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?


top