リグレットメッセージ -母さんへ-
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[母さん](1/1)
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母さん。
母さんはいつも、
「アタシは父さんの代わりでもあるんだからね!」
って、元気に笑ってたよな。
お父さんが参加の親子競技に、アタシはこいつの父親の代わりでもあるんだよ!って。
明らかに息子の先生に自慢するとこじゃないだろ。
しかも本当に周りのお父さん方と張り合ってんの。
母さん。
母さんが夜の仕事始めて、俺、ショックだった。
俺が高二のときだったよな。
高二にもなって、って思われるかもしれないけど、…なんか許せなかったんだよな。
母さんはいつも、俺の母さんで、父さんなんだって、そう思ってたから…
今度から晩御飯アンタひとりになるけどごめん
って。
母さん本当に悪いと思ってた?
そんなワケねえよな。
母さんは悪くねえよ。
母さん。
俺がさ、とうとう引きこもってさ。
母さんがドアの前で泣いてんの。
「今日はアンタの好きなビーフシチューだよ、一緒に食べようよ。」
俺がビーフシチュー好きだったのなんか、小学生のころだよ。
あれからもう10年近く経ったよ。
母さん。
母さんはさ、いつだって強かったよな。
今頃になって思うんだ。
母さんの泣いてるのって、父さんが死んだときと、俺が引きこもったとき。
二回だけだよな。
いっぱい反抗したし
いっぱい死ねとか言ったし…クソババアとか。
でも、母さんは何だって!?って目三角にしてさ。
ご近所さんにもいっぱい陰口叩かれてたじゃねえかよ。
その歳で夜の仕事なんか始めるから。
堂々とアタシ夜の仕事始めたんだ、なんて自慢してんじゃねえよ。
母さん。
母さんがさ、夜の仕事始めたのって、俺の学費のためだろ?
俺、わかってたんだ。
でもさ、母さんがやつれてくの、見たくないだろ?
一人息子の俺としてはさ。
だから、引きこもってみたり、母さんが仕事やめるように悪いことしてみたり。
引きこもって、いっそ学校やめれば母さんは仕事やめれるんだからな。
親孝行なんかしたことないバカ息子の浅知恵だったんだよ。
母さん。
結局さ、おまえは学校に行ってくれって、母さんは大丈夫だからって
嘘だったじゃねえかよ。
俺が学校に行ってる間に倒れてるって、どういうことだよ。
働きすぎ?
笑えねえよ、おい。
母さん。
俺さ、結婚すんだ。
昔さ、母さんと話したの、覚えてる?
「大きくなったらビーフシチューが上手なお母さんみたいなお嫁さんと結婚する」
ってやつ。
くだらねえよな、一生の伴侶の基準がなんでビーフシチューなんだよ。
母さんみたいな嫁もらったら、また無理して働きすぎるじゃねえかよ。
でもさ、俺はやっぱさ、母さんが母さんも父さんもやってくれたから、惨めな思いをすることもなく、ここまで来れたんだと思う。
俺の嫁さ、ビーフシチュー得意だとか言うんだ。
どことなくボーイッシュでさ、サバサバしてるとこ、母さんに似てるんだ。
結婚式は来月だよ。
孫、いつか連れてくるからな。
母さん。
今まで迷惑ばっかかけてごめんな。
母さんに負けないくらい、立派な父さんやるから、どうかそれで許してください。
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