知らない顔(1/19)
あたしも凜の後を追うように、トコトコと小走りで資料室へと向かう。
そして、扉に手をかけ、弟の名を呼ぼうと口を開いた。
「凜っ」
へ?
凜の名を呼ぶ、女の子の声が聞こえてくる。
何、この甘ったるい声?
そーっと覗いてみると、凜の後ろ姿が見えて、彼の肩ごしのすぐ近くに目を
瞑っている少女の顔があった。
彼女の小さな背中を、凜のすらりした筋肉質な腕が支えている。
もしかして…。
というか、もしかしてじゃなくてもキスをしている最中だよね?
背中に嫌な汗が流れたような気がした。
目を瞑っていた彼女が、不意に目を開けて、あたしとばっちりと眼が合った。