Distance

 §16.(a)distance  1/8

 「送って行かなきゃな?
遅くならないって約束だし」


ソファ−から立ち上がりながら、ポツリと拓海さんが呟いた


「はい、そろそろ」


本当は帰りたくない私…


返事はしたものの、私はそこを動こうとはしなかった


それは拓海さんも同じで車のキーを手で玩び何かを考えているようだった


「楽しかった?今日…」


食事中、言った台詞を拓海さんがもう一度口にした


「はい!すご−く楽しかったですよ」


私も、全く同じ返事を返す…


話しの内容なんて本当はどうでもいいのだ


…ただ、帰りたくなくて
…−ただ、離れ難くて


どうでもいい言葉を無理矢理繋ぎ、ここにいる理由にしているだけ…


「だから、人を部屋に呼ぶのは嫌なんだ…

特に茜ちゃんはね…」


拓海さんが、俯き加減に
小さく告げた


「何故ですか?」


半分わかっているくせに
私は彼の口から聞きたいと思った


…ホントに私、意地悪かもしれない……




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