§11.パンドラのはこ 1/11
それは、いつものように
拓海さんに勉強を教えて
貰っている時だった
勉強中はマナーモードのはずな拓海さんの携帯が着信を
告げている
「ごめんね?」
私に一言断ってから、拓海さんは部屋の隅に移動した
その表情は、いつになく険しい
小声で話しているので、内容まではわからないけれど緊張感が漂っている
その時、拓海さんから聞こえた一言に私は釘づけになった
「うん、今週も行くよ…
日曜日の昼過ぎには行けると思うから…」
−…日曜日の昼過ぎ
−−…そして、今週も
拓海さんには、通っている場所がある…−−
そして、その場所も
どんな理由かも
私は知らされていない…
拓海さんの通話が、終わったので私は勇気を出して確認することにした
「何かあったんですか?」
拓海さんは、ちょっと困った顔をした後
「たいしたことないんだ
気にしないで?」
と、微笑んだ
“嘘つき、そんな辛そうな顔してるくせに”
私は拓海さんに、それ以上は聞けなかった
けれど、少しも話して貰えない事実が私の心の中を黒色に染めた
“一応、彼女”のはずの私は…
彼が辛いとき、必要ではないのだろうか
私が、7つも年下の高校生だから?
隠しておいた、自信のなさが容赦なく私を襲う
普通に戻った拓海さんに
私はその日、最後まで上手に笑う事が出来なかった
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