それでも僕は、恋をする…。
03/[朝が来るまで](8/16)
―幼馴染/ML―
「何やってんだよ、七海。」
聞き覚えのある懐かしい声が、また俺の名前を呼んだ…空耳でもなんでもない、現実なんだけど、すぐには信じられなくて。
俺は恐る恐る目を開けた。
(ーー神様、どうかアイツに会わせないで下さい。)
強く念じれば、きっと願いは叶う。
そう信じて、目の前に立っている人を見上げた。
細いストライプのクレリックシャツをやけに爽やかに着こなす男が、少し渋い表情で、俺を見下ろしている。
「……拓也…」
何でこんな時に現れちゃうかな。
「何?この人、ナナちゃんの知り合い?」
「え、えーと…、あっ…」
後ろから俺の身体を抱きとめた男に聞かれて、なんて答えるか戸惑っている俺の腕を拓也が掴んで引っぱった。
「すみません。コイツ、俺のツレなんで。」
まるでさっきまで、一緒にいたんだけど、逸れちゃってみたいに、さらっと言ってるけど。
俺達、会うの確か3年ぶりくらいだよね?
「なんだ…ナナちゃん、彼氏持ちなら、そう言ってくれればいいのに。」
「え?いや、えーと…。」
なんか勘違いしてるけど、コイツは別に彼氏なんかじゃなくて…って説明しようとしてんのに、
「そうなんです。てことで、コイツ連れて帰りますね。それじゃ。」と男に言って、
俺の腕を引っ張って歩き出した。
拓也に引っ張られながら、肩越しに後ろを振り向くと、呆気に取られたように立ち尽くしている男の姿が、どんどん小さくなっていく。
「あー?あの、拓也?」
拓也は駅に向かっているのか、男と別れてから、ずっと無言で俺の腕を掴んだまま、進行方向を向きっぱなし。
俺が話し掛けると、やっと俺の顔を見た。
「…なんだよ。」
「何だよじゃねえよ…。久しぶりに逢ったのに、もっと言うことあるじゃん?普通。」
「何を言えばいいわけ? あの男は恋人なのか?とか、今からどこに行くつもりだったのか?とか、あ、それとももう掘られた後だったのか?とかか?」
「…何だよ、それ…。久しぶりに逢った幼馴染に向かって、そんな酷いこと言うかな?普通。」
「七海に普通なんて言葉、あるのかよ。」
「ひ、酷いっ、拓ちゃんたら酷い…」
「拓ちゃんて、言うな!」
一旦、言い合いを始めたら、お互いに引き際を見つけられずに延々と続く。
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