それでも僕は、恋をする…。
03/[朝が来るまで](12/16)
―幼馴染/ML―



俺の耳元を掠める息は、確かに拓也のもので。


胸の鼓動はそれだけで早くなってんのに。


俺を包み込む腕に力が入って、囁かれた言葉に、本当に心臓が止まりそうになった。


「…俺じゃダメか?」


声を出そうと息を吸い込んでみたけれど、吐き出すこともできなくて、呼吸も止まったままだった。


「なぁ…、俺じゃダメなのか?」


いやいやいや、これは只の冗談だ。そうだ、昔のドラマごっこ。


分かってるのに、なんでこんなにドキドキしてんのか、俺の心臓!


でも抱き締められたまま、俺は呼吸をするのも忘れて、ただ拓也の体温を感じていた。


そして、最後に落とされた言葉にに、俺の体内の熱が一気に上昇してしまう。


「…好きだ。」


冗談だと分かってるのに、胸がキュンっと締め付けられる。


なんだこれ…誰か説明してくれ。


「……た、くや…」やっと出せた声は、小さくて掠れてて、情けない声で。


それでも、どうしても言いたくなっちまった。


ずっと言えなかった言葉を。


「俺…拓也のことが…好き。」


後ろで拓也が息を飲む音が、微かに聞こえた。


俺の胸元に組まれた手の甲に唇を押し付けて、もう一度「好きだ。」と告白したら、さっきよりももっと心拍数が上がる。


少し力が緩んだ拓也の腕の中で、俺は身体を反転させて、拓也の首に抱きついて、


俺のよりも少し高い位置にある、拓也の肩に鼻先を埋めた。


(ーーあーあ…冗談なシチュエーションだけど、とうとう言ってしまった。)


だけど好きって言葉は、魔法のように俺を大胆にさせていくようだった。


顔を上げて拓也の顔を覗き込めば、意外にも熱を含んだ瞳に見つめ返された。


だからもう一度、魔法の言葉を口にする。


これが最後と、心に決めて。


「ずっと、拓也のことが好きだったんだ……、」


本当だよと、続けようとしたのに、その言葉は拓也の唇に塞がれて、言えなかった。


(ーーあ、あれ?なんで?)


てっきり笑い飛ばされて、それで終わりと思っていたのに。


歯列を割り入ってきた熱い舌に、俺の方が戸惑ってる。


俺の頬を包んでいる拓也の掌が、すごく熱い。


その手の上に俺の手を重ねてみると、拓也は僅かに唇を離して俺の瞳と視線を合わせて呟くように言った。


「なら、俺にしとけ。」


そしてまた唇が重なった。


リビングで点けっ放しのテレビの音を遠くに聞きながら、


気が付けば、俺達は互いの身体を強く抱きしめ合って、夢中で深いキスを交わしていた。



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