裸足の女神達 ～days in NUDE～
[美咲⑤](1/1)
「他にはどんな事を？」
ハルカは美咲の質問にすぐに答えず、再びタバコに火を点けた。
美咲はこういう時、基本的に相手に任せる事が多い。
相手が焦れて話し始めるまで、辛抱強く待つのである。
結局ハルカは、一服ならぬ三服し、まだ残っているタバコを灰皿に押し潰した。
「あいつはね… 爪が凄くのびてたんよ。それに乱暴。激しくやったら喜ぶと思ってるんやろ。完全にＡＶの観すぎ！」
「ひどい…」
風俗は、女性の大事なトコを相手に触らせる事が多い。
その為、爪をのばしていると、性器を傷つける可能性があるので事前にチェックする店もあるほどだ。
そして、美咲も担当した事があるが、とにかくＡＶマニアで生身の女性の経験が少ない客は要注意なのだ。
「ＡＶオタクの人って、とにかく激しくしてくるんですよねえ… こっちとしては気持ち良いわけないんですけど」
ハルカは、美咲の同意を得た為か、少し苛立ちが収まったようだ。
「そうなんよねえ。ましてや、こっちはこれが『商売道具』。傷つけられたり壊されたりしたら、オマンマの食い上げだっつーの！」
「待合室に注意の貼り紙してあるんですけどねえ…」
「いや～出来れば店でチェックしてほしいんやけどねえ… それはそうと、そいつフェラしてたらとんでもないこと言い出したんよ」
「まさか…」
美咲には思い当たる事があるようだ。
「…本番したいとか？」
「そうなんよ！それでウチは本番やってないっていくら言っても聞かなくて、揚げ句の果てに『金を払えばいいんだろ』みたいな事言い出して…」
喋りながら、再び怒りが込み上げてきたのか、ハルカの声がきつくなっていく。
美咲は、あまりにひどい客に、なかなか口を開く事が出来なかったが…
「…ホントに最低最悪な奴ですね。風俗で嫌われる『不潔』『乱暴』『本番強要』の三つともするとは… で、結局そいつどうしたんです？」
苦虫をかみつぶしたような顔で、ハルカは話し出した。
「あまりに本番本番うるさかったんで、少し脅しといた」
「脅す？」
「そう！しつこいとこわいお兄さん呼びますよって」
「なるほど…」
そこへ、男性スタッフが顔を覗かせた。
「ハルカさん、指名入りました」
「はいはい… 商売繁盛なんは良い事なんやけどねえ」
そう言ってハルカは立ち上がり、待合室を出ようとする。
しかし、ドアの手前で美咲の方を振り返り、軽くウインクした。
「入口で変な客が選別出来ればいいんやけどね」
（…ホントに）
高いお金払っているからとは言え、なんでも出来ると言うのは間違いだ。
働いている女の子も一般の人と変わりないのだから。
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