誰のせい?
[まさに高嶺の花だった](1/14)
__________...
5月。
「しんたろ〜〜〜」
「ん?」
「その漫画、貸してえ」
「いや今読んでんだよ、つか蓮奈お前これ3巻だぞ?1と2読んだの?」
「読んでないけどお〜〜」
「じゃあ内容わっかんねえだろ」
蓮奈が棒付きキャンディーを頬張りながら床に置いてあった1巻を手に取った。
ここは軽音楽部の部室。
5人で居座るには明らかに狭いけど、俺はこの部室が最高に大好き。
「ねえ、琴葉、今日ケーキ食べに行かない?」
「いや、昨日も行ったじゃん!」
甘いものが好きな朱里。
それに毎度振り回されている琴葉。
「朱里毎日それ言ってるよな」
颯斗が文庫本を読みながら言った。
「だってぇ、ケーキ食べたいんだもん…」
これが俺らの日常会話。
毎日放課後ここに集まってグダグダする。
「蓮奈は?無理なの?」
朱里の代わりに琴葉が提案をした。
トレードマークとも言える黒髪が日差しを受けて少し茶色に見える。
…きれーだなぁ…
「ごめん〜今日お父さんが帰る前に家帰んなきゃいけないんだよね!」
「そっかぁー…」
しゅん、と朱里が残念そうな顔をした。
「颯斗は?」
「ん…今日はコレ読み切りたいから」
コレは文庫本のことだろーな。
「慎太郎は?」
「んあ…俺?いいよ」
「やったー!!」
「よかったね朱里」
明らかにルンルンになった朱里。
ニコッと微笑む琴葉。
「えぇ〜デートじゃん」
ニヤッと蓮奈が笑った。
「私たちの間で恋愛感情とかなくない!?ね、慎太郎?」
「あ!?あーうん、特に朱里にはな!アハハ」
「それってどういう意味よ!?ねえ!!」
「あーこらこら暴れないよ二人とも。もー。いっつも朱里と慎太郎は暴れ出すんだから…」
俺を叩こうと手を振りあげた朱里を止める琴葉。
蓮奈はゲラゲラ笑っている。
颯斗もまるで息子達の戯れを見るかのような目で微笑んでいた。
ここでは、5人それぞれが素を出す。
教室ではおしとやかさの中に可愛らしさを含む朱里も、可愛らしさを残しつつ甘いもののことしか考えていない少女。
リーダーシップをとり責任感の強い琴葉も、ここでは世話焼きの朱里のお姉ちゃんだ。
蓮奈と颯斗は変わらない気がするが、明らかに俺らに気を許しているのがわかる。
教室では常に笑顔の俺も、ここでは常に笑顔ではない。楽しくない訳じゃなくて、家族といる感じ。
安心出来る場所、それぞれがお互いを理解し合っている場所。
そこが、軽音楽部の部室。
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