CRISIS。
▽5.(1/18)
ごめんって、心の中で何度謝っただろう。
このままじゃだめだってこと、俺が一番わかってる。
だけど、このままで、ずっとこのままで……
そう思ってしまって、手放せない。
きっと、他の人なら、好きだからこそ、身を引くんじゃないか?
だけど俺は、好きだからこそ、離したくないんだ。
誰にも渡したくないんだ。
水曜日の18時過ぎ。
いつも通り、インターホンが鳴る。
あの日、俺が日和を襲って傷付けた日から、約半年が過ぎた。
前のような関係に戻りつつもある。
体の関係もあるけど、出掛けたりもするし、前みたいに笑いながら話したりもする。
七世との関係も断ち切れないまま。
日和には七世との関係どころか存在さえ話していない。
七世にも好きな人の存在は話したけど、その好きな人である日和との関係を話していない。
俺は、つくづく最低でずるい人間だ。
「大和くん、今日は買い物ねっ!」
「はいはい」
「なにその嫌そうな反応はー!」
「別に嫌じゃないって。」
日和と居れるのに嫌なわけないだろ。
強いて言うなら、2人きりがよかったってだけだ。
「大和くん」
肩を並べてショッピングモールに向かう途中。
ふいに名前を呼ばれて彼女に目線を移す。
「なに?日和」
「大和くんってさ、……好きなひと、いるの?」
その質問はあまりにも残酷で、グサリと刺さってくる。
だけど、気付かれたくなくて出来るだけ冷静に答える。
「……いるよ。」
「いるんだ!どんな人?」
「……絶対に、手に入らない人だよ。」
そう言ったら、寂しそうにした彼女に、もう俺の話はいいよ って言って話を変えた。
日和は俺の気持ちなんて、知らなくていいんだよ。
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