邁進ランドにかける原液
[第11章](1/5)

前に

次は髪色どうしよう?

君が聞いてきたから僕は適当に青と答えた

最近になってようやく青を入れたけど

もうそこに僕はいなくて

白かった君も居なくて

君が視界に入らなくなってからというもの、毎日が清々しくて楽しくて仕方ない

それは嫌味でもなく、他意もない

「なあ、会いたかったなんて言葉も
会わなきゃ伝えられないんだぞ。」

久々に会ったニシヤはL字に並べられたソファーで横になりながら言う。

深夜2時のカラオケ店だ。

「ん?
俺がニシヤに会いたかったって?」

僕はマイクをテーブルに置いてから笑った。

「ちげえちげえ。ゆふねは会いたい人がいるんじゃないの?」

仰向けの彼は話しながら端末画面をスクロールしている。

いるよ。」

「本人に直接言わなきゃ伝わんないよ。」

彼は手を止めてからこっちを見た。

「ニシヤ、覚えてる?ミートボールのこと。」

「なんだっけ……あー、あのデブ?」

また端末に目を戻し、ニヤッとした。

その間ずっと僕は天井を眺めてた。

「デブ言うな。
ミートの隣の席だった子は?覚えてる?」

そして今度は吹き出した。

「ふっ、デブもミートも同じ扱いだろ。隣の席?そんなの覚えてるわけ、」

僕は両足の靴を脱いでからまた寝転び直した。

「んーと、天パでー」

「あー、ゆっぷが可愛いって言ってた?てかゆっぷ好きだったんじゃないっけ?あのー、ヤマ!山野木葉!てかバイト先一緒って言ってたよね?あそうだ!どうなったの?!」

端末の電源をオフったかどうかは定かではないが間違いなく僕の話題に食いつき、半分起き上がり出した。

「あのこ本当に可愛いよ。」

この前のバイトの時だって

僕が襟足を刈り上げてったのに
君も髪色を変えてきたものだから

僕のイメチェンが霞んでしまった。

「高原くん、ワックスせっかくつけたのに、へたっちゃってるよ。上のところ。さっきからそれすごい気になる。」

休憩室に入って休憩を取ろうとしていたところ、社員の中根さんが言った。

まじか

そんなに今の髪型

「おかしいですかね?」

てか山野もそう思ってたのかな

「いやおかしくはないけど右横だけ、いきなりペターってなってるから、ね?ヤマ」

「ふふっ」

「絶壁みたいにねえ?」

「あははっ」

山野めっちゃ笑うじゃん

狭い部屋のドアから離れようと
少し奥に詰めた

「これめんどくて、寝癖ワッサーってやっただけなんですよ。」

狭いところで
人口が密集するのは嫌だ

先輩たちが来たから
今すぐ出たい

「やってあげるよ。そこ座って。」

えー

中根さんはヘアアイロンのコードをさし温度を設定するとそう言った。

まじか

会話が弾むとは思えないし、この先輩、異性とはいえチンピラみたいで怖いし

ていうか髪触らせるのとか
山野はどう思うの

中根さんは整髪料を取りに一度退出する感じだったから

よーし

と思って

山野の頭を撫でた。

「こっちの頭のほうが気になるじゃん、な?」

シンク前でお客さんの飲み物を用意する山野はこっちを見ない。

ふふっ」

先程とは違い、
彼女はおとなしく笑った。

そんなことより
すげー触り心地いいなあ

さらさら、ふわふわ

一瞬で耳も顔も真っ赤になった。

うわ、すげえ
熱そう


- 51 -

前n[*][#]次n
/88 n

⇒しおり挿入


[編集]

[←戻る]