邁進ランドにかける原液
[第10章](1/5)

沼山とはメイク授業をきっかけにラインを追加してから、もう随分とやりとりが続いている。

沼山じゃなくて、七瀬って呼ぶようになったのが昔のことのように感じるほどだ。

居残りをしようと試みるも、見事に邪魔が入ったこともある。クラスメイトの女子ふたりだった。

その女子達に対し沼山もまた
来るんかい、と思っていたとか。

そこで神様が僕らを哀れんだらしく
沼山を家まで車で送る時間ができた。

やっと二人きりになれた

そして今までの経緯やらを話した。

閉校まぎわだった為、居残りの続きを私の家でしないかと彼女が問うた。

僕は

いいの?と様子を伺った後で
じゃあ、と微笑んだ。

いいの?なんてワンクッションを置かずに承諾しようとしたが流石にがっつき過ぎだと躊躇った。

彼女は兄に冷やかされると嫌だからと家に着いたら急いで私の部屋に入ってと言った。

僕は家に着くと靴箱の下に自分の靴を隠した。

「さんきゅーさんきゅー。」

そう言う七瀬は感心していたみたいだ。

シーッと人差し指を唇にあてながら僕を二階へ案内した

すでに車で渡されたチョコとキャラメルのスティック、つまりウェルカムスナックは頂いていたが更にポテトチップスまで貰ってしまった

そのチョコとキャラメルのスティックは僕の大好物で最初に渡された品としては非常に好感度が高い。

ハイセンスだ、素晴らしい。

七瀬の部屋は宣言通り散らかってて
妙に落ち着いた

ちなみにポテチは一緒に食べたけどね

汚さのハードルをめちゃめちゃに高く設定されていたものだから、それを軽々下回っている状態が心地いいほどだ

散らかってて引いたでしょ?」

いやむしろ
若いから当然だ

なんというか落ち着く

「そのクールな感じで部屋まで綺麗だったらそれこそ引いてたよ。」

僕はそう答えて笑った。

内心ホッとしてると七瀬も笑った。

皆様もお気づきかもしれないが
僕は今回一切、彼女に手を出さない

当たり前と言えば当たり前のことだ。

でも男子諸君の胸には響くことだろう
1度目のお宅訪問では手出し厳禁だ。

というか僕の場合、
最初からソノ気はまるでない。

決して悪い意味ではなく
彼女には純粋な愛があるんだ。

時には
まるで娘を見ているかのような気分に陥る

一般的に言う中学あたりの初恋みたいな
そんなテンションだ

とにかく、
ピュアな彼女にはピュアに接していきたい

もう連休になるからクラスの何人かで東京に行こうという計画も企てていたが

うやむやになり

というか彼女が
自分以外の女子と僕が関わるのが嫌らしく

僕と七瀬の二人で東京に行くことになった

もう通話も何度かしている
深夜3時まで話していたこともある

脈はありそうだ

でもどうなんだろう

仲のいい友達と思われてるのかな

分からないけど、変な意味じゃなく
この人を試すいい機会だと思った

付き合う前の男女みたいなやりとりが楽しかったりするんだ

電話切るのが寂しいとか、眠ってしまって電話に出られなかったことを怒ってるだとか

全てにおいて可愛くて仕方ない

もうすでに愛しさを焼き付けられたんだ

付き合ったら連絡マメになっちゃうかもなんて言う彼女は確かに僕にだけ返信が早いみたいだ

ラインなんて溜め込むものらしいけど

それだけで嬉しかったり

眠くなったときの声が可愛いとか
君が言ってくれるまで知らなかったよ

俺って可愛いの?

君の方が可愛いけどね

ただ、付き合ったら別れが必ずあるんだよ

君は告白されて付き合ったことしかないって言った。

好き”が分からないとも言ってた。

そういえば学科の時、隣の席の奴も言ってた。

「そんなこと言ったら、みんなそうだよ。」

同じように答えて

「それでも、なんかこの人いいなとか一緒に居たいなって思うのを強く信じちゃうんだよね、俺の場合。」

そう続けた。

付き合うとか付き合わないとか
正直そんなのはどうでもいいよ

一緒に居たい人と居るよ

今はそれで満足だけど

いつかそれじゃ満足できなくなるのかな?



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