邁進ランドにかける原液
[第8章](1/5)

僕はふと 思った。

「“興味”と“好意”の違いってなんだろうね。」

おもむろに口を開き
ニシヤに向けた。

「あー言われてみれば、なんだろう。
え、なんで急に?」

教習所の休憩スペースでだ。

「いや俺さ、人を好きになっても興味は無いのかなとか思い始めて。」

紙コップに注いだ緑茶はウォーターサーバーの赤い方を押したのに、もう冷めてしまっている。

昔から僕は物事にも人にも興味が無い

一応あるフリもするけど

「ん?それはどういう?」

ニシヤもまた
紙コップに手を伸ばし口に運んだ

「友達でたまに携帯うばって操作する奴いない?アレけっこう意味分かんないんだよね。」

この“意味分かんない”はマジで意味が分からないわけであって、否定の意味では決してない

「いるいる。それな。」

「いや別にいいんだよ?でも楽しいのかな?人の携帯に興味持たなくない?それこそ、彼女が携帯に夢中ならちょっとムッとするけど置いてある携帯勝手に見なくね?」

狂おしいほど愛せるのに
興味は無いなんて、どういうことなんだろう

それとも好意に興味は含まれているのかな

そういうのも
つぎ付き合う人には教えてほしい

前に母とドライブに行った時、母は残りわずかとなった充電を気にして携帯に充電コードを差し込んでいた。

コンビニから戻ってエンジンを入れた際、当然 携帯が充電開始の合図を出す。

そこで画面が光ったわけだが

それまで僕が携帯を見ていたみたいで気まずくなった覚えがある。

いや興味ねーよ!

と思ったけど

言う必要も無いから黙ってた

「まじで思う。まあでも俺の場合、友達とか彼女とかが覗き込んでくるのは好きだけどね。俺がいない時に見られるのは違うわ。俺も見ねーし、まず人の携帯興味ねーし。」

うんうん、それ

「自分のですらそんな興味ないのにな。で、おれ毎回付き合うたび相手に興味持てなくて。元カノが“なんで?”“どこで?”“誰と?”みたいな質問が多かったの疑問に思っててさ、その子は多分おれと逆で、興味はあって好意は無かったのかなって思った。」

そんなことより好きなんだよ

とかよく思ってたな

好きって言ってほしいなとか思ってた

同じくらい好きでいてくれるか
不安だったのかもな

キスも好きだけど愛の言葉が好きなんだよ

これはニシヤには言えないやつ

あ、

あとあれだな

好きって言わせようと
こっちから仕掛けるんだけど

なかなか言わないのよ

ただただ自分だけが好き好き言ってて

おれスベってるなあとか思ってた

たまたま、その子“は”興味ありの好意なしパターンだっただけであって

興味も好意もある人も全然 居ると思うし

「あー、興味に対する固執って感じかな?
あるきっかけで ゆふねに興味を持ったものの興味を好意に履き違えて付き合って、で、興味を興味のまま持ち続けて質問ばっかになったのかもね。」

うん

やっぱり

ニシヤは分かってくれると思ってた

「そうそう!それ!それで自分の中で溜まってた質問を解消したら最後、あれ好きじゃないかも?ってなっちゃったんだろうね。興味終了つって。ははっ。」

面白くねーよ
ほんとは

分かっちゃって つらいよ

俺だって好きで好きでしょうがなくて
なんでどうしてって思うこともあったよ

でも ぶつけてばっかも引くだろどうせ

結果 引いてったよ

俺が描いた なんかの絵本にも出てきたろ

「歌ったら引くんでしょ。」

俺が言ったら

「引かないよ。」

そう返したのにね

時折だれかに、ミステリアスだね
なんて言われたりして

苦笑い浮かべるんだ

馬鹿言うな、誰に対しても
ミステリアス演出してんだよ

だから別に
君に隠し事してたつもりはない

さらけ出した何かじゃなく僕自身にその興味を向けて欲しかったよ

好意を剥き出して欲しかった

君がする物事に興味なんて無かった

君が居てこそ成り立つ

結局“君が”する何かだからそれに興味を示そうとするわけであって

全ては君発信だ。

君が誰と居ようと正直かまわない

でも誰かに触れないでほしいってのは
僕が君を好きだからだ

興味なんかじゃなくてこれは好意だ。

誰と居たの?

じゃなくて

僕の好きな君に触れないで
ってただそれだけ。

君自身が好きだった
めちゃくちゃ好きだった

あれ

なんか

おんちゃんの話になっちゃってるわ

これ以上はやめとくね

痛みがぶり返しそうだ



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