モブ側ラブストーリー
[ヒロイン強し](15/15)


「……お前、鼻息荒いんだよキメェな」


「は、な、何も嗅いでないですから!ってか、離してっ」


思いっきりスンスン嗅いでたんだけどな。だって甘くて柔らかくて、すげえいい匂いするから。

そろそろ離れたくて、里山の腕の中で少し暴れてみると、足元の自転車に足が引っかかって、バランスが崩れる。


「………重いわ」


もたれかかるような形になってしまって、それでも優しく抱きしめてくる里山。ど、どうしたんだよこいつ。暴言吐きつつ全然離してくんないじゃん。

なんなの?私のこと好きなの?ドが付くツンデレなの?デレ感じたことないけど。


「………さ、さとやま、さん」

「…あ?」

「…し、仕事!仕事中に、こんなこと、女の子とこんな」


仕事、と言えば仕事に真面目な里山は、私に回してた腕を離すと、分かっていた。
里山を見ると、普通に何事も無かったかのように私を睨んでいた。


「…………あーーー、お前ほんと腹立つわ」


ええ?私悪いことしたっけ?

里山は倒れた私の自転車もそのままに、スーパーの袋だけを拾って去って行って、私はしばらくそこから動けなかった。
そんな簡単に、切り替えられない。


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