華麗なる殺人
8†[聖夜の復讐](1/11)
仮面の男の背後に見えるのは、磔にされた鴇田公平の姿だった。
全裸にされ、頭を垂れている。
三人は息を飲み込み、言葉を失った。
「……あなたは、誰ですか?」
先頭に立つ大樹が静かに口を開いた。
そのもっともな質問に、仮面の男は小さく笑みを浮かべた。
「単なる通りすがりの者だ。君たちは、この男に監禁されていたんだろ?」
「……えぇ」
黙り込む二人に代わって、羽音は目を伏せたまま答えた。
仮面の男は後ろ手に隠し持っていた日本刀を大樹に差し出した。
「復讐をするか、しないかは君次第だ。俺が手を貸すのはここまで……」
その目には凛とした力強さが宿り、全てを見透かしているようだった。
日本刀を前に、固まったように動かない大樹。
今彼は何を考えているのか──。
羽音と陽子は固唾を飲んで、じっと成り行きを見守った。
「……復讐は、悪いことだと思いますか?」
「自分の胸に聞いてみろ。お前の心は何と言っている?」
「お、れは……ッ」
大樹の背中が小刻みに震えたかと思うと、決意したかのように日本刀を手に取った。
素早く仮面の男が脇に避ける。
無防備な姿をさらす鴇田公平はすぐそこにいた。
これ以上の復讐のチャンスはない……。
羽音は汗ばむ拳を握りしめた。
もし、大樹が怖じ気づいて日本刀を落としたら、私が代わりに復讐を果たそう。
陽子の方を見ると、彼女は目を閉じたままじっとしていた。
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