華麗なる殺人
5†[悪魔の館](1/18)
これが悪夢でなければ何だと言うのだろうか。
羽音はボサボサになって脂が浮いた髪を掻きむしりながら、幾度となくため息をついた。
お風呂好きの彼女にとって、脂やフケとは無縁だったはずなのに。
監禁されて数日、長く見積もっても一週間ほどしか経っていない。
それなのに、今の自分はホームレス同然の不潔さだった。
……もう、最悪!
羽音は心の中で吐き捨てた。
気まぐれで犯人から配られるチョコレートや菓子で飢えをしのいでいるため、とりあえず餓死の心配はない。
時々、モニターに映し出される大樹と鴇田陽子は食べ物を与えられている様子がなく、明らかに衰弱していた。
なぜ自分だけが比較的自由で、食べ物も与えられるのか。
犯人側の意図が知りたいような、知るのが怖いような──。
そんな宙ぶらりんの状況に置かれ、羽音は胃がキリキリと痛むのを感じた。
「どうしてこんなことに……」
苛立ち紛れに呟きかけて、ハッと口を噤む。
後悔していないと言えば嘘になるが、実果のために行動を起こした気持ちは本物だった。
でも、まさかこんなことになるなんて……。
行き過ぎた正義感は身を滅ぼすのだろうか。
大切な親友を殺され、あろうことか無罪放免となった加害者に復讐を考えた自分の甘さを痛感せずにはいられなかった。
「あ……っ」
羽音が声を上げたのは、モニターに大樹の姿が映し出されたからだった。
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