華麗なる殺人
3†[闇取引](1/27)
冬の寒さが一段と増してきた頃、羽音は窓辺に佇んで灰色の空を見つめていた。
今日、実果の兄とともに鴇田陽子に会う。
大樹は鴇田公平が同席することを条件にしたから、彼女は弟を連れて来るだろう。
実果を殺した犯人と会う……。
羽音は深呼吸をして、怒りと緊張を鎮めようとした。
感情的になったら負けだ。
なぜ実果を殺したのか、そのことに対してどう思っているのか。
大樹も同じ疑問を持っているだろう。
問題は、殺人犯とその家族との面会場所をどこにするかだった。
外で会うのはマスコミに張られている可能性があるから危険だ。
かと言って、被害者である実果の実家で会うことも出来ない。
結局、鴇田陽子とその母親が暮らす小さな町に赴くことになった。
小雨が降り注ぐ中、羽音と大樹は電車に揺られていた。
お互い言葉を交わすことなく、緊張の面持ちで目的の駅に着くのをじっと待つ。
電車から降りると、まだ昼過ぎと言うのに外は薄暗かった。
「あ……」
大樹が小さく声を上げて立ち止まる。
駅のホームにベージュのコートを着た若い女が立ち、羽音たちの方を見ていた。
もしかして、と大樹を見ると彼は険しい顔つきで顎を引いた。
……彼女が、鴇田陽子。
羽音は殺人犯の姉を前にして、一気に緊張が高まるのを感じた。
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