柘榴、それからツインテイル


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皐月の空の






 天高く馬肥ゆる……のは秋だが、しかしそれに負けず劣らず、五月晴れの今日も、高く抜けて綺麗な空だ。

 そんな青空を視界いっぱいに臨む屋上。僕と野々田と悠斗、それに花折と四ツ谷といういつもの五人で、野々田手製の弁当を囲んでいる。
 おにぎりに唐揚げ、エビチリと野菜スティック……と思いきやアンチョビソースを添えてバーニャカウダ。デザートには大量の果物を詰め込み、ちょっとしたパーティのようだ。


「うう、何でいいんちょとクラス別々になっちゃったんだろう……」

「え? 逸仁くんと、じゃないの?」

「なっ、何言ってるの紗子ちゃん!」

「ほらほら、そんなに声を荒げないで。人恋しい二人は、おねーさんが頭を撫でてあげよう」

「わーい、えへへ」


 小さい女子二人(客観)を左右に侍らせ、野々田はくすりと笑う。
 それに対して花折と四ツ谷もにこにこと大人しく応じるから、何というか、性別と容姿というのは極めて不公平なものだと思う。


「……なあ、逸仁」


 ぼやっ、とした声で、悠斗は僕に声を掛ける。その声音から察するに、どうやら僕と同じようなことを思っているらしい。

 まあ、花折の性別を知らない以上、完全に同じとはいかないだろうけれど。


「……おー、どうした悠斗」

「あれってさ、普通は男子の役割じゃねーのかなーと、俺なんかは思うんだけど」

「ほう、せくはらだ。あだ名に違わぬ発言だね」

「……委員長、俺が女好きキャラになってるのはお前の発言も原因だと思うんだがな」

「濡衣だとでも?」


 挑発するような声音をつれて、野々田は悠斗に視線を向ける。初夏仕様で若草色のフレームが、爽やかな色で彼女を飾っている。

 唇だけで笑う野々田に溜息を送り、悠斗は果物に手を伸ばす。

 衝突を避けるのは、多分一番懸命な判断だろう。







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