前田くん
前田と須藤(1/3)
*
「お前 麻生に何言ったの」
前田はいつもと変わらぬ風に
目の前にいる須藤へ投げかけた。
彼女が悲痛な声を出したその日の、放課後、踊り場。
帰ろうとする須藤を呼び止めて、前田はここに呼び出した。
二人以外に、この場所で息をする者はいない。
「……俺、最初は前田のこと
良い奴だと思ってたよ。変わってるけど面白いし」
「…」
「俺 麻生が好きなんだ。4月からずっと。
そんでお前が麻生の前の席になって お前ら仲良くなってさ
正直妬いて、俺が麻生とよく話すんだってお前に強がって言ったことあったけど」
須藤は言葉を選ぶように 少し間をあける。
前田は顔色を変えない。
「でもお前らほんとにいい雰囲気だったから
俺 諦めようと思ったよ マジで」
「…」
「なのに なんなのお前」
須藤の声に 怒りが混じった。
「なんなのって 何」
「席替えして立花と前後になって あんな風にあからさまに仲良くなって
麻生がどんな顔で見てたかお前知らないだろ」
「…麻生は俺の事 どんな風にも見てない」
「それマジで言ってんならぶん殴るぞ」
「…ていうか 俺の質問に答えてない」
「は?」
「麻生になんていったの」
「…誰彼構わず女に思わせぶるようなやつに
答えたかねーよ」
「…」
「お前がそんななら 俺麻生のこと諦めんのやめるから」
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