グッド騎士
[第四話『堕天使が求める女』](1/9)
ウェインライト城は恐ろしく静かだった。
廊下にはいくつもの死体が転がっていて、放置されている。
軍服を着たヴォルフィード人も死んでいたが、八割はウェインライト人の亡骸だ。
ルシファーはその凄惨な光景を目にしても、ただ「死体が邪魔だな」としか思わなかった。
生きているヴォルフィードの軍人もいた。
ルシファーのことは皆知っているようで、彼を見かければ深々とお辞儀をした。
シュヴァリエに刺された脇腹を抑えながら、皇太后を探す。
「くそ...やはり...回復するのに時間がかかるな...前ならもっと早く治っていたのに」
誰に話すわけでもなく、独り言を言う。
暫くして、出血が止まった。
痛みが引いたので、傷が塞がったことを破れた服の間から確認する。
「これはこれはルシファー様」
声をかけられ、視線をそちらの方に移す。
見知った顔が近付いてきた。
シルクハットをかぶった、いかにも紳士風の男。
肩より少し長めの髪は夜空色で、瞳は琥珀色...ネージュと同じだが、ネージュと違ってこれが生まれつきのものではないと、昔から顔見知りのルシファーは知っていた。
つまり、髪は染めていて、瞳はカラーコンタクトである。
化粧をしていて、瞼には菫色のアイシャドウ、唇には血の色の口紅。
鼻が高く、美青年ではあるが、どこか不自然な整いすぎる顔。
彼はリュヌの側近。
名をメフィストフェレスという。
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