よそよそしい肌色




「さよなら」ばっかり

たまには

「またね」って言ってよ






見送ってるのにさ

振り向きもしないで

わたしがあげた

動かない男だけ握りしめて

何もなかったみたいに

すぐに他人の色に紛れて

わたしのことなんか

知らないよって

知るもんかって






あなたの名前を呼んでみても

雑踏にもみくちゃにされるだけ

答えてくれない

この中であなたのこと知ってる人

わたしだけなんだからねって

強がってみても

すぐに恋しくなる

泣きたくなる






追いかけたいのに

追いかけられなくて

誰かと肩がぶつかって

邪魔だなって睨まれて

あなたとは正反対に

歩き始めてしまう

わたしも大概

知られてない














偶然に会った時は

隣にいる別の女に

夢中なふりして

野良を見るみたいな

目を向けるくせに

約束をして会った時は

安い贈り物を片手に

かさついた唇を

甘ったるい形にして

わたしを酔わせる

あなたにとっては

それは価値のないこと

だから、あなたは役者

わたしは……




わたしは、何だろう

バカだから分からない




ただ、あの目が

あの眼差しが

あなたから離れさせなくする













幸せになりたくない人間なんていない

あなたも

幸せになりたいんだよね

誰よりもなりたいんだよね






街に

わたしに

人生に

よそよそしいあなたの

家族になりたい

血潮のかよった躰を

抱き締めたい

瞼とこめかみにキスをしたい

だからあなたの

愛してるの発音をちょうだい?

そしたら反芻して

咀嚼して嚥下して

そうやって吸収された

あなたの分身は

必ずわたしの糧になる






唯一無二のあなた

わたしだって唯一無二

すごいことなんだけどなぁ

分かって欲しいのになぁ

あなたが癖で蹴る

灰色の石ころだって唯一無二

限りなく特別で

限りなくありふれている






わたし、ありふれた恋をしてる

特別なあなたに

わたし、特別な恋をしてる

ありふれたあなたに

ただ、それだけ



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