裏表依存症
久里浜≡戸部 06
久里浜 和志と醜悪 《完》 (1/13)



和志「……。」

俺は言葉を失った。
動作はそこで止まると命令されていた機械のようにビタッと止まり、頬の筋肉がこわ張ってわずかに痙攣してる。

俺は社屋4階にある8畳程の部品倉庫兼作業場みたいな部屋で、古本屋の本棚の如く立ち並ぶ地震がきたら終わりな部屋で、部品棚を1人漁っていた。
そこへどうゆう訳か先輩の同期の田浦かなえが入ってきた。

ほとんど部品倉庫化しているこの部屋には滅多に人は来ないためか、目の前にいる田浦かなえは声音を弱めることなく公然と言った。


『私、この前見ちゃったんだ。久里浜君と戸部が……キスしてるの。私の見間違いだったらごめんね!………でもどうゆうことなの??』


どうゆうことって…
…そうゆうことだよ。

いや、見間違いっすよ。あはは。

いやいや、それで決定的な次の手を言われたらお終いだ。

言い訳をするにも長く考えすぎた。

田浦「えぇ!何?!なんで黙ってるの?!まさかほんとになんかあるの?!」

田浦かなえは半ば大袈裟とも取れる風に両手で口を押さえ、目をかっぴろげて驚きを露にしている。


和志「いやいや、ある訳ないじゃないすか。ちなみにいつの話ですか??」

手ははっきりと震えて、立っているのがやっとな状態だったが、部品を探す動作を再開したことによってあまり目立たなくなり少しだけ平静になれた。
でも胸か背中に手をあてられたら確実にヤバい。

田浦「いつって…夕方だったかな。この前の土曜日の。私出勤してたんだけど、帰りに電車止まってて隣り駅まで歩いたのよ。ほんとやんなっちゃう。…じゃなくて、その道中に見たんだけど。
 何してたのよ。」

最後は一拍空けて無感情で聞いてきたので、恐ろしくなった。

面と向かって話してたら縮み上がってただろうな。

和志「何ってなんもないっすよ。ただ俺のバイクが故障してたから見てもらっ……」

田浦「何もないはずないじゃない。あんた達軽く2分はキスしてたわよ。いくら街灯がない場所で暗くなってきたからって、2分間キスしてたらそれが誰だかわかるでしょう?あんな路上で…大胆にも程があるわよ。」


そこまで言って彼女は息をすぅっと吸い吐いた。

こいつ分かって聞いてきやがった…

諫めて見逃してくれると思ったが、甘かった。








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