裏表依存症
久里浜糟ヒ部 05
戸部 雅哉の倒錯 《完》 (1/5)



私は彼にのめり込んでいました。
30十余年の今まで自分に欺き心猿し続けていた、感情があの夜自らしたキスの暴発で抑制しがたい程の熱い想いを半年経った今尚持続しているのです。

それも彼に見つめられる度に増している気さえしました。

今まで女性としか付き合ったり、肌を合わせたことのなかった私には彼の柔らかではあるけれど男らしい骨格が露になる白い素肌と私に対する魅惑にすっかり溺れていたのです。
彼もまた同じに思えました。


現に彼は終日幸せ者が放つオーラをまとって仕事をこなしていたので、社内でもその事が女性内に噂になった程であったようです。
やはりその点男性は疎く、女性から詮索されそう言われればと言った具合でありました。
親しい同期には女が出来たと素直な嘘を伝えているとのことでしたので、時にからかわれたりしたらしいです。
そんな時に魅せる彼の爽やかで愛らしくはにかむ表情を想像しただけで私は至福の心地になりました。

かく言う私は公私の切り替えが難無く出来る方なので、…というか社内にいる時はなぜかそう言う気持ちになれないのでした。

久里浜さんにときめいたのは一体初めての経験だったのです。

職場の階が違う事と仕事上それほど接点がない事がこれ程有り難い時はなかったかと思います。
同じフロアであって絶えず接触するような業務であったらと想像するだけでゾッとしました。





しかしうつつの私は遊びに夢中で忍び寄る暗夜の知らせに気付かないまま夜を向えてしまった子供のように、取り返しのつかない時間に侘しく切なく絶望するのでした。






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