害虫駆除。

 †――[過去と現在](1/22)




アタシはお父さんに言われた通り
ポケットから小さなリング式のノートを取り出すとソレを軽く開いてから

「ありがとう」

そう告げて無我夢中で走りだした。


ありがとう、その言葉がお父さん自身に届いたかは分からないけれど…届いた事を願うばかりで。











目的の場所は公衆電話。

呼吸も荒くて涙で前は見えないし、
正直言って大切な父親を失って今にも倒れてしまいそうだ。

けれど工藤颯太と言う人物に助けを求めなければならない


公衆電話のドアを開け、
スカートのポケットから小銭入れを出し受話器を取ってから10円を入れ、
ノートに書かれた番号を押していく








――プルルルル…

―――プルルルル…








お願い…出て。

お願い……お願い。




『もしもし?』

「あっ…」

『どちら様?』


若干高めの男性の声。
手が汗ばむ。





「楠木…廉太郎の娘の、美波…です…」

『えっ廉太郎の?』

「助けて、助けて…助けて…お父さんがっお父さんがぁああああ!!」



涙が止まらない
止めようとしても
全く止まらない涙。

お父さんではなく、
お母さんの事を言わなければならないのに……

間に合わないと分かっていても
お父さんを助けたかった。




『ちょ…どうした!?美波ちゃんは冴八木に住んでるのか!?』

「そ…です…」

『なら居場所教えてくれ、今から行く!!』

「うっうああああーっ!!」





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