旧図書館の住人は
[第三章 理屈乎氏の弱点](1/21)
「りっくん、食料は何日分貯めてあったっけ?」
いつの間にか梯子の上の自分の部屋でパソコンを打つ聖次から、全くかけ離れた質問が降ってくる。
「2週間分くらいじゃないか?」
「大丈夫かなぁ」
「…有原、君はしばらく自分の家に帰ることができないみたいだな。」
「…え?」
「それに、ソファにゆったりと腰掛けて事件後の余韻に浸っている場合でもなさそうだ。」
「…さっきの、子供が来た後の悪い事態ですか」
「その通りだ。聖次、詳細は」
立て続けに事件に巻き込まれていると知っても、こんなに落ち着いていられる自分も、確かに前までには考えられなかったな、
と思いながら祥子は重い腰を持ち上げた。
「…んー、その前にさ、祥子ちゃんとももう親しい間柄だし、みんなで一緒にお風呂に入ろう!」
持ち上げた祥子の腰は、ズコッ、とソファの硬い肘置きに落下した。
尻を抑え、涙目になりながら思い切り疑問符をぶつけてやろうと息を吸う
が、視線が理屈乎から聖次に移りかけた時、理屈乎の眉が静かに上がったのを見た。
祥子は、吸った息を静かに吐き出すと、空気が読める人間になったと自分を褒め称えたくなった。
理屈乎の様子と、聖次の理解不能な発言から、“何かある”と察したのだった。
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