GIVE UP
[神倉禅という男](1/10)



1度も誰も座っているところを見たことが無い席。


それは私、早乙女千秋(さおとめちあき)の座る一つ前の席の事を指していた。




前の席に本来座っているべき人物の名は神倉禅(かみくらぜん)というらしい。

そこまで気にかけている訳では無いんだけど、どうしても毎日視界に入る位置にその席があるせいで、どんな人なのか想像してしまう。




「千秋〜!!次体育だよー!はやくー!」

「あっ、今行くよ〜!」



1番仲のいいクラスメイト、水篠愛梨(みずしのあいり)に声をかけられハッとした。

次が体育ならば着替えなければならない。

時計を見ると着替えの時間はもう10分も無さそうだ



急いで体操着の入った袋を抱え、教室の外に出ていた愛梨を追いかけた。


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