藤宮家select

→[select 陽人](1/73)



「陽人は作る気ないの。
ここで……恋人的な、人」

詰襟を緩めて髪を掻き上げた
瑠依先輩に、苦笑しながら
眉間に皺を寄せて振り返る。

グラウンドの見える生徒会室で
尋ねられた、暖かい放課後。

「有り得ませんよ。だって
ここは……男子高なんですから」

言い切った俺は
間違いなくそう思っていた。

『有り得ない』

心からそう、疑う余地もなく。
まさか自分だけは、と。



家での役割は『父代わり』

陽人君なら心配ない。
やってくれるだろう。
出来て当たり前だ。

昔から感じていた
そんな周りからの視線。

自分でもそう思っていた。

『揺るがない』
『揺るぐわけがない』

『揺るぐわけにはいかない』

そう奮い立たせて
日々を送っていたんだ。



そんな中、突然降ってきた
父の再婚話について特段に
何も思わなかった。

ただ、その連れ子を引き取ると
聞いた時には『ふざけるな』と
思わずにはいられなかった。

ただでさえ、4人の弟の面倒を
何かと見なければいけない立場。

その内1人は手がつけられない。

それなのに、もう1人増える?
冗談も大概にしてほしい、と
心の中で唇を噛んでいた。



そしてやって来た君に
今までの自分が間違っていたと
実感させられてしまったんだ。

何がって、何から何まで。

頑張り方や、接し方
それから、恋とは何か。

きっと、今の私を昔の自分が
見たら硬直して、卒倒するかも。

そんな風に思えるほど
私の中で私が変わった。



好きだよ。
自分でも抑えられないほどに。

怖い。
君に手の届かなくなるのが。

人を想って、涙が出ることを
初めて知った気がする。

君と出会って
自分がどれだけ脆いか
気付かされたんだよ。



優希君。

それでも傍にいてほしい。
だけどとても怖いんだ。

こんなに苦しいのに
どうしてこの感情は
消えないんだろう。

やっぱり、君が好きだよ。

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