egoisming!
#5:リスタートな王子(1/11)
おかしい。なにか私はやらかしてしまったのだろうか。
ムムム、とスマホの画面と睨めっこして顔をしかめていると、咲舞が横からヒョイっと覗き込んできた。
「どしたの、伊摘」
「えいくんから連絡が全く来ない…」
そうなのだ。あんなにも毎日のように他愛もない会話を交わしていたのに、プツン、と連絡が止まってしまった。
あの日の切ない声が、私が聞いたえいくんの最後の声だ。なんて言ったらいまは亡き人みたいになるけど、本当にもうここ一ヶ月は連絡をとっていない。
「死んだ魚のような目でプロフィール画像を見つめてるの、ちょっとヤバい人みたいだよ」
哀れんだような目で私を見る咲舞に、「早く課題終わらせなさい」と促した。お気づきかもしれないが、私たちは課題をギリギリまで溜めてしまう常習犯なため、コンピュータルームでよく会う。今もコンピュータと向かい合っている。
「でもさ、もう一人いるじゃん?咲舞の推しメンの可愛いわんちゃん」
「あー、あるくん?」
「そう!その人とラブしたら?」
「ラブするって動詞新しいね」
きゃっきゃと他人事のように楽しむ咲舞を横目に、えいくんの最近更新されたプロフィール画像を見つめる。
誰が撮ったのかは分からないが、傘をさして橋に背中を預けるえいくん。なんとも格好つけたそのプロフィール画像だが、サマになっている。
もういいや、と、スマホを閉じて課題に専念しようとした時だった。黒い画面に浮かぶ、そのメッセージ。
《有飛:いっちゃん今学校かな?》
《有飛:来週の日曜って空いてない?》
「あるくんと、ラブ、しちゃおうかなぁ」
「大いに有り!!咲舞は大賛成だよ〜!」
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