夜の学校は不気味だった。
隆博が片手の人指し指の先に光の珠を浮かべて懐中電灯代わりにしていた。
智美「さすが白虎、LEDより発光してるね」
初めての事件のわりには智美は案外落ち着きがあった。
刑事という職に就いてるからだろうか。
隆博「任せてください。LEDよりも高性能ですので」
俊亮「LEDと対抗すんな」
すると遠くなら音がした。
恐らく今いる廊下のずっと前の方から音がしている。
隆博「何かいます…」
ヒタ……ヒタ…ヒタ…
ズル……ズル…ズル…ズル
俊亮「足音ではねーな…」
隆博「何か引きずってる音すか…」
その音はだんだん近くなっていく。
そして何か呻く声がした。
隆博は急に立ち止まった。
智美が隆博の顔を見ると、何やら青ざめていた。
正面をみると、廊下の床に何か物体が這いつくばって向かってきた。
俊亮と隆博にはそれが何だか知っていた。
隆博「………………!!」
智美にはそれが人と判別できなかった。
何故なら、それは身体の骨が一切ない状態のある意味脱け殻のような生き物だった。
俊亮「…………奈央さん……!!」
隆博「何でここに……?!」
智美「……知り合い?」
俊亮「広恵の同級生…。高校の時に禁忌の呪いに手を出して鳳凰様と麒麟様に怒りを買って…」
奈央。一作目で広恵の過去の回想で出てきた。(詳しくは一作目参照。)
知ることすら許されない禁忌の呪いに手を出してしまったことで広恵が止めようとしても既に時既に遅しでそんな姿になってしまった。
智美「…あの儀式を?何でその子が?」
奈央は歯すらなく話せず、ゆるゆるとこちらに向かってきた。
発見された時、あまりのショックに駆けつけた広恵と修造まで腰を抜かしたという。
あの事件が原因で広恵は火の能力を没収されて保護の能力を与えられた。
智美「あの儀式は私にしかできないのに…一般の人が使うのは許されないのに…」
俊亮「それって鬼の番人の儀式だったの?!」
確かに鳳凰と麒麟が直結的に関係しているならば、鳳凰と麒麟の令で動く鬼の番人が使用するという点では理解できる。
智美「でも私個人の意思で行うことはできない…お二方の令がないと…」
隆博「それも執行命令がないとダメなんですね。でもその儀式は」
智美「ごめん、これ以上は口外できない。儀式の内容は口外できないの」
俊亮「でも何で今奈央さんがここに?」
奈央は急に口からヌメリと苦しそうに何かをゆっくり吐き出した。
それは臓器だった。
隆博「……臓器………」
俊亮「………………」
それが何を意味しているのか俊亮には把握できた。